えらいぞ、バルク (その2)

天才少女復活。そして、道営の星も復活。
諦めないチャレンジがやっと実った。えらいぞ、バルク!


シンガポール航空国際カップ>◇国際G1◇
ホッカイドウ競馬コスモバルク(牡5、田部)が、悲願のG1制覇を海外で成し遂げた。逃げたヴルームヴルーム(オーストラリア)の2番手を進み、直線半ばで抜け出した。タイムは2分6秒5。世界7カ国の計13頭が出走した国際舞台で、地方馬として史上初の海外G1制覇。昨年5月の香港・チャンピオンズマイル(10着)に続く2度目の海外遠征を敢行し、国内外通算10度目のG1挑戦でビッグタイトルをつかんだ。
 北の怪物が、ついにやった。ゴールの瞬間、コスモバルク五十嵐冬樹騎手(30)が、右手をクランジの夜空に高々と掲げた。涙目で引き揚げると「フォー」と何度も叫び、大観衆に応えた。目を潤ませた田部和則師(59)は「チームバルクの執念です。まだ終わっていないぞ、という気持ちはあった」と胸を張った。
 完勝だった。手綱をがっちり押さえ2番手を追走。直線に入って早々にヴルームヴルームをかわし、先頭に立った。あとは約400メートルの直線。前には栄光のゴールだけ。「最後は頭が真っ白になった。最高です」と五十嵐。バルクはあん上のムチに応え、2着キングアンドキングに1馬身3/4差をつけ、真っ先にゴールに飛び込んだ。
 スタート直後、折り合いを欠くシーンもあったが、向正面から落ち着きを取り戻した。「最後は手応え十分だった」と五十嵐は振り返る。朝に激しいスコールがあり、日本表記ではやや重の馬場状態。苦手とされていた状況を克服しての海外G1制覇だった。
 昨年5月の香港G1チャンピオンズマイル10着に続く2度目の海外遠征。国内では地方馬ゆえに、中央ではステップレースで上位入賞が義務付けられるなど、G1挑戦には厳しい制約が設けられている。今回も天皇賞(春)出走を逃しての挑戦だった。苦境を克服しての快挙に、岡田美佐子オーナーも「ここまで期待していただいて、ようやく応えることができました」と笑顔で語った。

 14日付の地元のタブロイド紙「ザ・ニュー・ペーパー」では3人の評論家のうち2人(1人は2番手)が1番手に評価した。「力を出し切れば、勝つのはこの馬」と紹介していた。レースでも3番人気に推された。シンガポールに到着した3日早朝、空港で馬運車まで運ばれている途中、コンテナから顔を出していたバルクの前で大型機が離陸した。それでも平然としていた。「普通はびっくりするのに、こいつすごいと思った」と榎並調教厩務員。初めて訪れる地でも、馬体重は昨年の有馬記念(506キロ)とほぼ変わらない504キロ。周囲の想像以上のタフさを今回も発揮した。
 次走は6月25日京都の宝塚記念(G1、芝2200メートル)を目指す。昨年の有馬記念で接戦を繰り広げた中央の強豪も出走してくる。ディープインパクトも参戦予定だ。最高の舞台に胸を張って臨む。「これでファンが復帰してくれるかな。また中央に行きますよ」と田部師。バルクの新伝説が、ここから新たに始まる。
(日刊スポーツ) - 5月15日8時46分更新